ビジネスメール実態調査2024

全文引用はマナー違反?

ビジネスメールのプロに質問!

メールで返信をする場合に「全文引用」と「部分引用」という方法があると聞きました。例えば、どのような使い方があるのでしょうか。

茨木ち江講師からの回答

先日、関東近郊の出版社でビジネスメールの研修を行ったところ、管理職のAさんから「『全文引用』を使うことは、マナー違反ではない、と聞いてびっくりした」という声をいただきました。Aさんは、日頃から、「全文引用は使いにくい」と感じていらしたそうです。「メールが長くなる。履歴は自分のメールソフトの送信履歴を見れば分かるから」というのがその理由でした。Aさんは、やりとりを行う相手の方には、「履歴をつけずに返信してほしい」と伝えていらっしゃるそうです。

ある企業にお勤めのBさんは、業界的に全文引用を行うことが暗黙のルールになっているそうです。行き違いや、伝達漏れを防ぐために必要だとのことでした。

ビジネスメールでは、効率良く、必要な情報がしっかり相手に伝わる書き方を心がけることが大切です。この手助けになる本文の書き方のひとつが「引用」です。相手が書いたメールの文章を自分のメールの返信文で用いることが「引用」で、「全文引用」と「部分引用」の2つの方法があります。詳しくは、ビジネスメールの教科書でも解説をしていますが(参考:「引用して効率的に返信を」)それぞれのメリットとデメリットを知ることで、上手に使い分けることができるようになりますよ。

メリットとデメリットを知ろう

宛名は相手の会社名・部署名・役職名・氏名(フルネーム)を正確に書きます。会社名は正式名称を書きます。略称や通称は使いません。「(株)」と略さずに「株式会社」とします。
氏名はフルネームで書きます。会社名や氏名の漢字を間違えることは大変失礼です。名刺を交換していれば、確認しながら正確に書きます。
メールの署名があれば宛名の部分をコピペすれば誤字脱字を防ぐことができます。宛名には敬称をつけて下さい。「○○様」と書きます。
メールのやり取りが何回も続いていても、この宛名の書き方が原則です。電話の応対でも毎回、自分がどこの誰かを名乗り、どこの誰と話したいのかを伝え挨拶しますよね。
メールの本文の最初に宛名を正確に書くのは基本です。メールでは顔が見えない分、声の調子が聞こえない分、メールのルールを守り言葉遣いを丁寧にすることが必要です。

引用の種類 メリット デメリット
全文引用 一通のメールで、これまでの履歴を把握しやすい やり取りを重ねるうちに文章が長くなり読みづらくなる
部分引用 文面がスッキリまとまり、読みやすくなる 削る部分と残す部分の判断が必要(誤ると誤解を生む可能性がある)

「全文引用」「部分引用」のどちらが良いかは、一概には言えません。なぜなら、業務内容や業種業態による取り決め、状況によってメリット・デメリットが変わってくるからです。例えば、先ほどのAさんとBさんの“使い方”を比べてみると・・・

Aさん ・・・ 履歴は送信履歴で簡単に確認できるので「部分引用」
Bさん ・・・ 一通のメールでプロジェクトの経過を全て確認できるから「全文引用」

また、“使う理由”を比べてみると・・・

Aさん ・・・ 「部分引用して回答すると一問一答形式になり行き違いが防げる」
Bさん ・・・ 「途中からCCで他の人と情報共有をする場合が多いので便利」

このように「全文引用」「部分引用」のどちらを使うかは、使用する状況によって異なります。

あなたはどのタイプ?

「全文引用」「部分引用」どちらの場合も、メールのマナー違反ではありません。大切なことは、メリットとデメリットを知り、状況に応じて使い分けることです。

Aさんのように、すでに関係性が構築できている相手に「履歴をつけずに返信してほしい」と、自分の希望を事前にお伝えしておくのも、気持ちよくメールでコミュニケーションをとっていくための一例です。しかしBさんのように、業界的に全文引用を使用することが一般的な方もいらっしゃいます。どうしたら良いのか、迷った場合には、相手がどのように引用をしているかを見て、相手の引用方法に合わせる、というのもひとつの方法です。