ビジネスメール実態調査2024

「させていただきます」は使わない方が良いですか?

ビジネスメールのプロに質問!

新人研修の発表で「させていただきます」という言葉を何度か使用していたら、ビジネスマナーの講師から使いすぎると指摘がありました。「心から相手に敬意をはらおう」と丁寧な気持ちを込めて使っていたので、その指摘に驚きました。メールでも「させていただきます」と、よく書いていたのですが、今後はどのように使ったら良いのか不安になってしまいました。

渡瀬恵津子講師からの回答

確かに「〜させていただきます。」はビジネスメールでもよく見ますし、日常会話でもよく耳にしますね。メールはもちろん、対面でも電話でも、「させていただきます」という言葉は、ふさわしい相手や状況で使うことで、よりスムーズなコミュニケーションに繋がるものです。現在では、若い世代ばかりではなく年齢を問わず使われており、「とりあえずこの言葉を使っておけば安心だろう」という姿勢が透けて見える方には、私も助言を差し上げることがあります。相手に違和感を与えない使用方法について、一緒に考えてみましょう。

ふさわしい場面とは

 

一例をご紹介します。先日、テレビを見ていたところ、ニュース番組のレポーターが「〜させていただきます」を多用していました。

それでは私が○○について解説させていただきます。まずこの件の専門家の△△さんにお話を伺うために事務所に訪問させていただきました。(中略)数字を正確にお伝えさせていただきたいのでメモを見させていただきながらお話させていただきます。

 
比較のため、こちらの一文を読んでみてください。できれば音読して比較してみると良いでしょう。

それでは私が○○について解説いたします。まずこの件の専門家の△△さんにお話を伺うため事務所に訪問させていただきました。(中略)数字を正確にお伝えするためメモを見ながらお話いたします。

 

「させていただく」は謙譲表現です。目上の方や役職の高い方の代わりに目下の経験の浅い者が書いたり話したりする、あるいは専門家を相手に素人が対応するのであればぴったりの表現ですから、ここでは、専門家の△△さんに敬意を表すために用いる部分のみを残しました。いかがでしょうか。音読してみると、特に違いがよく分かりませんか。

こちらの書籍『敬語マスター:まずはこれだけ三つの基本』蒲谷宏(著)(88頁)に詳しい記述があり参考になるので引用します。

(1)「自分」がすることを、(2)「高めようとする人」の許可をもらって行い、(3)そこに「ありがたい」という気持ちがある。実際にこれらの要素がある場合には「~(さ)せていただく」を使ったほうがよく、そうでない場合には「~(さ)せていただく」を使うことに違和感を持たれるおそれがある

 

「どちらも丁寧に聞こえるのだから問題はないだろう」というご意見もあるかもしれませんね。しかし使いすぎた場合、プラスではなくマイナスの印象を与えてしまう恐れもあるため注意が必要なのです。

  • 「慇懃無礼」「嫌味で誠意がない」と受け取られる可能性
  • 「させていただく」が過度に目立ち内容が記憶に残りにくい

正しい文法を使いましょう

文法として間違っている使い方にも注意が必要です。よくある間違いは、このようなものです。

×私が報告のメールを書かせていただきます
○私が報告のメールを書かせていただきます

 

「私が報告のメールを書かせていただきます」は誤りです。
「書く」と「させていただく」をつける際によけいな「さ」を残してしまっています。「書かせていただきます」が正しい使い方です。

敬語は、適切に使用することで好印象を与え、円滑なコミュニケーションに役立ちます。
敬語は苦手だ、難しいという声をよく受講生から聞きますが、使い慣れない言葉には誰でも抵抗を感じるものです。

少々の間違いを恐れることなく、ふだんから正しい敬語や言葉づかいを意識し使うことを心がけましょう。使っていくなかで、徐々に正しい使い方を覚えていけば問題はありません。
「円滑なコミュニケーションを行うため」という敬語本来の目的が達成されないのは本末転倒ですし、それであなたの印象が損なわれることは非常にもったいないことです。

日本ビジネスメール協会が開催しているこちらの講座でも「正しく・印象良く伝える」ビジネス文章作成のコツをお伝えしていますし、ビジネスメールの書き方に関する書籍も色々ありますので、参考になさってくださいね。私たちは皆さんのビジネススキルアップをいつでも応援しています。